019 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか – vol.2

018章にひき続き、調査に関連する事象を追いながら、考察したいと思います。

調査についての考察のために、関連する事柄を時系列で記載するとともに、私から組織委員会の担当者に送ったメールの一部を記載して、説明を加えていきます。組織委員会からの返信については基本的に記載を控え、要約した概要を記します。

時間は今から2ヶ月半前の9月18日に遡ります。
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■ 9月18日
大会組織委員会の「準備会」の初会合が開かれた。会議後、記者会見した宮田亮平・座長は、‥‥旧エンブレム制作者や審査委員への聞き取りについては「必要性は感じておらず、考えていない」とした。(朝日新聞 デジタル版 9月19日)

■ 宮田亮平・座長は18日、‥‥撤回に至った旧エンブレムの選考や問題点を検証する方針を明らかにした。ただ、佐野研二郎氏や審査委員代表を務めた永井一正氏らのヒヤリングは行わない方針。「過去の出来事は検証するが、新しいものを作るための土台としたい」とし、責任論までは踏み込まない考えを示した。(日本経済新聞 電子版 9月19日)
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■ 9月24日
組織委員会より出品者に向けて、応募作品を返却させていただきたいとする、作品返却についてのメール連絡があったことを、出品者より教えてもらいました。
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2015年9月24日に、組織委員会より出品者に対して、出品以降はじめてメール連絡がきたことを、出品者から教えてもらいました。そのメールに添付されていたレターには、エンブレムの白紙撤回に伴い「東京2020エンブム選考に向けた準備会」を発足したとの記述とともに、作品返却の意向が書いてありました。出品後、7月24日の1位案発表についても知らされず、いちども連絡がないまま10ヶ月が過ぎて、はじめの連絡が作品返却の通達という非礼な対応に、出品者の気持ちを考えると胸が痛くなりました。審査委員の立場としては、審査の公正性を確認するために作品を確認する必要があると考えておりましたので、作品返却は見過ごすことができないと考え、返却レターの書名主の○○さま宛に、10月3 日にメール(Mail-01)を送りました。

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■ 9月28日
五輪エンブレム問題の報告の記者会見が行われ、武藤敏郎・組織委員会事務総長から、招待作家に関して調査の必要性があるとの見解が示されました。
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■ 9月29日
「エンブレム委員会」の初会合を東京都内で開き、コンセプトや応募資格などについて意見交換した。‥‥宮田亮平・審査委員長の、『旧エンブレム制作者や審査委員への聞き取りについては「必要を感じておらず、考えていない」とした』(朝日新聞 デジタル版)との見解が発表されました。
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(Mail-01)
■ 10月3日16:55メール送信
平野→組織委員会○○様

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
○○様

はじめて連絡差し上げます。
審査委員を努めましたコミュニケーションデザイン研究所の平野と申します。

エンブレム問題発覚以降、▲▲さま(CC▽▽さま)宛に連絡しておりましたが、メールの返信がいただけなくなり、今日に至っています。出品者のおひとりより、○○さまの連絡先をお聞きし、連絡いたしました。▲▲さまとのやりとりの中で、調査に協力したい旨もお伝えしていますが、返信をいただけずにおります。武藤さまが調査の必要性について発言なさっておられましたことも伺い、審査委員のひとりとして、調査に全面的に協力させて頂きたい旨、再度伝たく、連絡いたしました。

また、作品返却のことも出品者より聞き、知りましたが、調査を行うのであれば、作品返却は早計なのではないかと考えます。なぜならば出品作品の中に、今にして思うといくつか気になる点があり、調査を行うのであれば、そのことを確認する必要があると感じています。ですので、作品返却については、調査が完了するまで先送りにしていただくことを要望いたします。

ご多忙のこととは存じておりますが、以上の二点についてご回答いただきたく、なにとぞよろしくお願いいたします。

平野敬子
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■ ○○さま宛の質問メール(Mail-01)への返信はありませんでした。
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■ 10月6日13:02電話受信
組織委員会△△様→平野

組織委員会の○○さまの代理と思われる△△さまより電話が入りましたが、離席していたために対応できませんでしたので、平野への連絡は電話ではなくメール連絡を希望する旨を、代理の者が伝えました。
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■ △△さまからメールの連絡はなく、平野から△△さまにメール(Mail-02)で連絡を入れました。
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(Mail-02)
■ 10月6日21:44メール送信
平野→組織委員会△△様

オリンピック パラリンピック組織委員会
マーケンティング局△△△△
△△様

△△さまのメールの返信をお待ちしておりましたが、返信をいただけませんでしたので、メールにて連絡いたしました。○○さま宛に、以下の二つの要望をお送りし、メールの返信をお待ちしておりましたが、

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▲▲さまとのやりとりの中で、調査に協力したい旨もお伝えしていますが、返信をいただけずにおります。武藤さまが調査の必要性について発言なさっておられましたことも伺い、審査委員のひとりとして、調査に全面的に協力させて頂きたい旨、再度お伝えいたしたく、連絡いたしました。また、作品返却のことも知りましたが、調査を行うのであれば、作品返却は早計なのではないかと考えます。なぜならば出品作品の中に、今にして思うといくつか気になる点があり、調査を行うのであれば、そのことを確認する必要があると感じています。ですので、作品返却については、調査が完了するまで先送りにしていただくことを要望いたします。
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更なる要望があり連絡しました。現在、調査が必要といわれている招待作家及び招待作家の作品について、審査委員として出品物の内容で気になっている作品があります。ですので、招待作家及び最終選考に残った14作品について、返却前に早急に確認したいのですが、可能であれば、明日にでも伺いますので、本件についてご回答下さい。審査委員として、すでに見ている作品を見てはいけない理由があるのであれば、その理由をお聞かせ下さい。
審査委員として、この状況に対して、責任を果たしたいと考えており、このような要望となっています。返信をお待ちしておりますので、宜しくお願いいたします。

平野敬子
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(Mail-03)
■ 10月7日17:21メール受信
組織委員会△△様→平野

メールには、私の質問や要望に対する具体的な回答はなく、近々、有識者調査委員会が立ち上がる予定なので、しばらく時間を下さいとの旨が記されていました。
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(Mail-04)
■ 10月7日21:43メール送信
平野→組織委員会△△様

オリンピック パラリンピック組織委員会
マーケンティング局△△△△
△△様

理解力が悪くて申しわけありませんが、「しばらくお時間をください。」とのことですが、お待ちしている間に、作品は返却なさらないという理解で間違っていないのですね。返却の有無について、念のため確認させて下さい。

平野敬子
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(Mail-05)
■ 10月9日15:26メール受信
組織委員会△△様→平野

メールには、私の質問や要望に対する具体的な回答はなく、再度、近々、有識者調査委員会が立ち上がる予定なので、応募作品返却についても有識者調査委員会の調査、判断に従うであろうとの予測的見解が記されていました。
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(Mail-06)
■ 10月10日20:41メール送信
平野→組織委員会△△様

組織委員会マーケンティング局△△△△
△△様

返信を拝読しました。
まだ、どのようになるのか未定というご見解であることを理解いたしました。

平野敬子
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このような組織委員会との進展のないやりとりに限界を感じ、10月10日に個人のブログをスタートさせました。はからずも1964年の東京オリンピック開催初日と同じ日となりました。

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■ 10月10日
“HIRANO KEIKO’S OFFICIAL BLOG”を開設し、公の場で調査の必要性を訴えるとともに、協力の意思を表明しました。
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■ 10月20日
出品者に向けて組織委員会より、作品返却の方針を改め、外部有識者による調査のために応募作品の返却は見合わせたいとのメール連絡があったことを、出品者より教えてもらいました。
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■ 10月29日
外部有識者による調査委員会が設置され、同日に第1回会合が開かれたことが公式発表されました。
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(Mail-07)
■ 10月29日08:45メール受信
組織委員会□□様→平野

組織委員会より、外部有識者による調査依頼のメールが入りました。
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(Mail-08)
■ 10月29日19:58メール送信
平野→組織委員会□□様

前回審査の審査委員として協力を惜しみません。
どうかよろしくお願いいたします。

平野敬子
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平野敬子

平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める