040 新世界へ

6月25日に開催されたJAGDA総会の場で、JAGDA見解文書が事前告知なく議案として提出され、議決承認されてより2ヶ月近く経った8月12日、JAGDA事務局からメール連絡が来ました。ようやく一連の出来事についての説明がなされるのだろうとメールを読み進めたところ、イカサマ文書同様に事実は語られず、短い文章の大半が、視点のすり替えや詭弁もしくは虚偽で構成されたイカサマメールであったため、JAGDA見解文書の解読よりもJAGDAメールの解読を優先することにしました。

JAGDAメールは会員の意識が理事会に向かわないよう、事務局長の署名の文章になっていますが、そもそもこのメールの内容は、JAGDA理事会の意向であり、内容はすべて理事会の意思であるという前提を理解しなければなりません。相変わらず詭弁を駆使した事実に反する内容からは、JAGDA理事会とJAGDA事務局の、どこまでも世間を舐めた無責任で不遜な態度や状況認識の欠如する様が見て取れます。

まず、以下に受信したJAGDAメールの文面を記述いたします。(*アンダーラインと赤字は筆者付記)

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JAGDA会員の皆様へ

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会エンブレム第1回設計競技について」見解文に関するお知らせ

6月25日(土)に開催した2016年度通常総会の第1号議案の中の2015年度JAGDA事業総括の項で、原副会長による、標記の見解文の朗読が行われました。

この見解文は、エンブレム問題に関する2014-15年度の全理事・全運営委員の見解を総括したものです。総会議長進行上、第1号議案について、この見解文も含めて一括して承認を求めたかのような状況になりましたが、議案として全会員に事前に通知・配布したものではないため、本総会において承認の議決にはなっておりません。誤解を招く進行となりました旨、事務局としてお詫び申し上げます。

見解文は7月14日に全会員に発送(7月28日にJAGDAウェブサイトにて一般公開)しましたが、その送付状に記載のとおり、会員の皆様からのご意見・ご感想を集約することが、本総会後に開催された運営委員会(7月25日)および理事会(8月9日)であらためて確認されました。

先の送付状には、ご意見・ご感想の送付先を記載しておりませんでしたので、ここにお知らせいたします。一応の締切を9月末までとさせていただきます。皆様からいただいた内容を理事会・運営委員会で共有させていただきます。

公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会
事務局長 大迫修三

(2016年8月12日JAGDAメールより)
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このメールの文面で、問題と思われる箇所をアンダーラインと赤字で記しました。具体的に解読を進めますと、

この「お知らせ」には目的があるはずですので、まず目的は何なのかを考えてみました。総会でJAGDA見解文書が議決承認されましたが、その方法の問題点については、すでに当ブログの036章から4回にわたり指摘してきました。ですので、総会で承認をとりつけた文書は、実は承認は成立しないことがブログを通して広く知られてしまっていますので、JAGDAとしては会員に状況を説明する必要があるはずですが、JAGDAメールには事実は説明されておらず、主文には「誤解」という怪しげな言葉が用いられていました。

この「誤解を招く進行」とは、何なのでしょう。

総会の出席者に「誤解を招く進行」があったのかどうか質問したところ、「総会議長の進行は滞りなく行われたので、議長の進行には誤解はない。誤解があるとするならば、議案となっていないはずのJAGDA見解文書が、第1義案の議案のひとつとして、理事の朗読によって提案され、議決し、承認された。これが、誤解を招く進行というのであれば納得できる。ただし、議案になっていなかったというのは、後になって知ったことなので、総会当日は、進行に対して疑問は生じなかった。誤解を招くようなことはなかった。」と説明してくれました。

この「誤解を招く進行」の前段には、「総会議長進行上、第1号議案について、この見解文も含めて一括して承認を求めたかのような状況になりましたが」との一文があり、議長の進行によって見解文書の承認が一括して起きてしまった事態のような印象を与えているとともに、「総会議長の進行上」と、進行役が総会議長であると明記しているために、「誤解を招く進行」における進行役は総会議長を指すことになります。これによって、誤解を招く進行を行った総会議長の進行上の問題によって、このような事態を招いてしまいましたと、誤解を招いたことが議長と言わんばかりの書き方になっています。

どこまでいっても、総会での不適切な強行採決は理事会側の問題ではなく、あろうことか、会員である進行役の総会議長に責任があったかのようにも受け取れる、無責任な理屈が展開されていました。総会出席者は201名、欠席者が2,848名と、欠席者が出席者の14倍以上という圧倒的多数の状況においては、JAGDAからの説明が公式な情報を知る唯一の手立てであるはずなのに、責任ある公益社団法人として、なぜ本当のことを伝えないのでしょうか。

更に解読を進めますと、「承認を求めたかの状況」の「かの」という言い回しが気になりますが、総会の場では、「積極的に承認を求めた状況」であったため、「承認を求めたかの状況」ではありませんでした。理事が24分の時間を費やしてJAGDA見解文書を朗読し、朗読後、理事が「了解いただきたい」と承認を求め、最終的には賛成多数として議案決議され、承認されました。その場で「了解できません」と異議を唱えた会員に対しても、「‥‥今日決議しなければ、明日からこの組織が活動できません。ですからぜひ議事をきちんと進めたい」と事務局が止めに入り、最終的に議決案承認となりました。この状況は、ブログ037章に記述しています。

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JAGDA理事会が答えに詰まったところで「この見解に対しては理事会と運営委員会で決めました。だから認めないのならば結構ですが‥‥今日決議しなければ、明日からこの組織が活動できません。ですからぜひ議事をきちんと進めたい」と事務局が割って入り、質疑応答がフェードアウトして、次の議題に進みました。
(037章 イカサマ文書 by JAGDA – vol.2 3段落目より
https://cdlab.jp/blog/?p=330
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ブログでは個人名の記載は避け「事務局」と記述しましたが、「今日決議しなければ、明日からこの組織が活動できません。ですからぜひ議事をきちんと進めたい」と積極的に承認を促す発言をしたのは、JAGDAメールの送り主でもある事務局長の大迫氏であり、文書の承認に向けて、理事とともに積極的に動いた当の本人が、「承認を求めたかのような状況」と曖昧な言い回しで事実をはぐらかし、「誤解を招く進行であった」と進行に問題があったかのように視点のすり替えを行い、印象操作を行ってまで責任者を理事以外の他者に押し付けるなど、これはどういうことなのでしょう。理事会は何のために最高責任を与えられているのですか。

なぜ、本当のことが言えないのか。

なぜ、本当のことを言わないのか。

なぜ、ごまかし続けるのか。

事実はひとつ。理事が先導してJAGDA見解文書を制作し、第1議案として提出し、「了解いただきたい」と承認を求め、議決され、承認された。しかし、この文書承認のプロセスはルール違反の不適正な方法であり、本来であれば、総会前に全会員に文書を送付したという実績がなければ文書は総会で承認できないにもかかわらず、そのことを黙ったまま承認を進め、承認をとりつけた。しかし、承認を取り消さざるを得なくなったので取り消した。これがJAGDAメールで説明すべき内容です。

なぜ、起こったこと、起こしたことに対して、当事者が本当のことを説明しないのですか。もしも説明しないのであれば、役職を辞任すべきではないでしょうか。

2016年7月6日に、全会員に向けて配信された『JAGDA news』にも、「議事:すべての議案が賛成多数により可決されました。」と明記されています。

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■Members:2016年度通常総会 終了報告

さる6/25(土)、京都・上七軒歌舞練場にて開催された通常総会・全国大会は、盛況のうちに終了しました。

▼2016年度第33回通常総会
出席者:1,550名(出席:201名/書面表決状:1,059名/委任状:290名)
定足数:1,525名(構成員:3,049名)
議 事:すべての議案が賛成多数により可決されました。

(2016年7月6日配信『JAGDA news』より)
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改めてここでもう一度、総会当日のことの成り立ちについて考えてみると、事実の可能性はふたつあるのではないかと思います。

ひとつ目の可能性は、『理事会と事務局長の二者が、議事として本件の決議を進めたという可能性。なぜならば、当日、会員の異議申し立てに対して事務局長が割って入り、決議の妨げとなった会員の発言は止めたけれども、文書が理事による24分間の朗読によって議案として提出されたことに関しては制止せず、議事の進行を止めず、進行を促している。このように、理事会と事務局の二者が、文書承認を総会の議事として進行させ、決議に至ったものの、後日、方法の不適切さを第三者に指摘され、総会で行われた事実を訂正せざるを得ないと考えて、理事会の意向として理事は責任を負わず、進行の不手際であったかのような説明とともに「文書が承認されていない」旨が伝えられた。』

ふたつ目の可能性は、『事務局はJAGDA見解文書を第1議案として提案するということを予定しておらず、本件はそもそも議案ではなかったが、議事進行の予定を無視して、理事が独断で、突然文書を朗読し、議案として提案し、「了解いただきたい」と承認を促して、総会で決議されたが、事務局には対応力がなく、その場で予定していなかったイレギュラーな進行を止めることができなかった。後日、第三者の指摘によって、総会での決議方法が不適切であることを指摘され、訂正を余儀なくされるに至っては、理事会の意向として理事は責任を負わず、責任を他者に転嫁し、事務的な間違いであったかのような説明による訂正が行われ、事務局長が謝罪した。』

本件は、事務局長の謝罪によって決着がつくような事案ではありません。問題にすべきは、文書に関わる不適切な行為行動についてです。理事会の意思によって制作過程の不明なJAGDA文書を作成し、突然、議案として提出し、積極的に承認を取り付けた事実について、なぜそのような強行的な方法でJAGDA文書の承認をとりつけたのか、なぜ事前に文書を会員に見せなかったのか、なぜいちど承認を得た議決案の承認を取り消さなくてはならなかったのか、そもそも、どのようなプロセスを経て制作された文書なのか、これら一連の怪しげな行動や方法について、理事会は責任者として、会員に対し、速やかに説明を行い、不適切な方法の非を認め、謝罪しなければならないのではないでしょうか。

「お知らせ」に見る詭弁の羅列から、これを動かしている人たちには、良心の呵責というものがないのかと、哀れみの気持ちさえ生まれてきました。

五輪エンブレム問題から連なった、不適切な行動と隠蔽工作が平然と行われる嘘に覆われた自浄作用の働かない世界には、誇りは無く、信頼は無く、真実は無く、美は無く、未来はありません。私は、新世界へ進みます。

平野敬子

平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める