001 責任がとれる方法で

7月24日に行われた、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会エンブレムの広報発表直後のオリビエ・ドビ氏の抗議からはじまり、浮上するさまざまな問題に対し、エンブレムを審査した審査委員のひとりとして心が痛まない日はありませんでした。これまで公の場で発言しておりませんでしたことを、心よりお詫び申し上げます。

この間、新聞、テレビ、週刊誌といった複数社から取材依頼の連絡をいただきましたが、経験したことのない特殊な状況ということもあり、どのように対応すればよいのか瞬時に判断できず、また審査は8名で行われましたので、ひとりの発言が他7名の審査委員にも影響を及ぼすと考え、発言を控えてまいりました。連絡をいただきましたマスコミのみなさまに、この場をかりてお詫び申し上げます。

審査委員の責任を果したいと思っておりましたが、本人確認もないまま組織委員会が無断で流布した審査委員の集合写真をもとに、テレビの情報番組によって興味本位に作られたイメージが拡散し、あたかも罪人のように扱われながらなす術もなく、マスコミのメカニズムの怖さを目のあたりにし、責任を果すためには、偏った情報となる可能性がある方法は選択したくないという思いが強まっていきました。

私のポリシーとする、『デザインの匿名性』を優先するために、また仕事における守秘義務を遂行するために、今までソーシャルメディアと距離をとってきました。しかしエンブレム問題における疑念が何ひとつ晴れないまま、いたずらに時間が経過するなか、国民のみなさま、そして尊い時間を費やしコンペに参加して下さいました出品者のみなさまに、審査委員として知り得ることを、問題の本質がぶれないように、責任がとれる範囲と領域において、責任がとれる方法でお伝えするためには、直接書き記すしかないと考え、このページを開設することを決断いたしました。

これまで組織委員会には、調査に協力したい旨を申し出てきましたが、明確な回答をいただかないまま今日に至ります。これからはじまるエンブレム審査がより良い結果を生むためにも、改めまして公のこの場で、「調査に協力させていただきたい」との意思があることをお伝えいたします。

平野敬子

平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める