021 何のための調査なのか、調査の目的は何なのか – vol.4

018章、019章、020章にひき続き、時系列の記録に則り、調査について考察したいと思います。

—————————————————
(Mail-21)
■ 11月18日15:19メール受信
組織委員会□□様→平野

「作品をご覧いただく必要がない」と考えている理由は、これまで述べできたとおりであり、020章の(Mail-20)で、私が示唆しているような理由ではないとの否定の返信がきました。

調査委員は今回の調査において、参加要請を行った人の作品の審査での取り扱いについて、他の作品との比較においてどのように取り扱われたか、審査委員に知らされずに当該作品が次のステップに残る方策が取られたのかを十分に検証することで、「調査の目的を達すると判断している」との説明とともに、物的証拠の重要性については、これを重視して進めていると記されていました。

以上のことを理解してもらい、調査への協力を検討してもらいたい旨が記されていました。
—————————————————

—————————————————
(Mail-22)
■ 11月18日23:09メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

私の質問に対するご回答のメールを拝受しました。メールの確認がこのような時間になりましたので、明日の返信とさせていただきます。取り急ぎ、メール受信のご連絡にて失礼します。 

平野敬子
—————————————————

—————————————————
(Mail-23)
■ 11月20日21:53メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

改めまして、一昨日いただきましたメールを拝読しました。いただいた内容からすると、

つまり今回の調査では、審査時の出来事に関しては検証するが、招待状の発送から審査が始まるまでの間のことは一切、検証しないということですので、その期間に審査委員と特定の作家との間に、仮に特別な情報交換があり、その結果が作品に反映されていたとしても、調査委員としては、それは「今回の調査範囲には含まれない項目である」という見解であるということですね。とても大切なことですので、念のため確認させて下さい。
調査に協力させていただくかどうかを判断するうえで、三つの質問があります。

まず一つ目の質問ですが、「物的証拠の重要性については、当然ながら、これを重視して進めていただいている」との返答を読み、「物的証拠の重要性」とはどういうことなのか、お聞きしたいと考えました。審査委員であった私が、審査で見ている上位14作品について、再度、見たいと申し出ていますのは、「物的証拠の重要性」を考えているからです。しかし、私が物的証拠を確認することについては拒否し、拒絶なさる。とすると、調査委員がお考えになっている「物的証拠の重要性」とは、どのようなことなのでしょうか。具体的にお教えいただけないでしょうか。

二つ目の質問ですが、特定の作家の氏名をお聞かせいただけないでしょうか。関係者からの情報も得ていて、氏名をほぼ把握していますが、私は審査委員であったにもかかわらず、いまだに(組織委員会から)名前を聞けないままでいます。本来ならば審査前にお知らせいただく情報を、いまお教えいただけないでしょうか。お教えいただけないのであれば、その理由をお聞かせください。

三つ目の質問ですが、今回の調査にはどなたが協力し、どなたが協力しないのか、お教えいただけないでしょうか。お教えいただけないのであれば、その理由をお聞かせください。

以上の質問につきまして、宜しくお願いいたします。
—————————————————

—————————————————
(Mail-24)
■ 11月21日16:20メール送信
組織委員会□□様→平野

協力してもらいたい点は、これまで送っている質問事項のとおりであり、審査時の出来事以外は検証しないということではないとのこと。

物的証拠については、「質問事項の内容について確認できるものの取り付けを重用視して進めている」とのこと。

参加要請文書を送った人の名前を組織委員会から伝えることはできないとのこと。その理由は、全員に調査協力を任意でお願いし、全員から協力いただいているが、その前提には名前の公表を一切しないことにしているとの説明が記されていました。
————————————————–

◆(Mail-24)に関連する事項
参加要請文書の送付先である特定の作家8名の人選については、参加要請文の送り主2名のサインが示しているとおり、4人の人選は永井一正さんが、残り4人は高崎卓馬さんが行ったということを関係者から聞いています。

—————————————————
(Mail-25)
■ 11月23日14:47メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

日々、ご苦労さまです。ご多忙な中、私の質問に対してご回答くださり、ありがとうございます。

調査に協力するにあたり、6つの質問と4つの要望があります。要望がとおらない場合は、必ず理由をお聞かせください。

————————–
(質問1)
「物的証拠につきましても、質問事項の内容について確認できるものの取り付けを重要視して進めております。」との説明の意味が理解できないでいます。具体的に説明いただけないでしょうか。作品が物的証拠として大切に取り扱うのであれば、作品を検証なさるのですか。しないのですか。また、検証するのであれば、検証の方法を具体的にお教えください。
(質問2)
▼▼さんは元組織委員会の人として、審査委員とは別の立場としての調査を受けると認識していましたが、▼▼さんは審査委員の立場としても、質問を受けているということなのでしょうか。
(質問3)
元組織委員会の▲▲さんは調査に応じられたのですか。
(質問4)
招待作家8名が調査に応じているということは、◇◇さんも調査に応じられたということですか。
(質問5)
審査当日のビデオを見たいのですが。もし見ることができない場合は、理由をお聞かせください。
(質問6)
◎◎さんは参加要請を受けた作家ですが、グラフィックデザインの専門家として、コンペに関するアドバイスをしていたことを、組織委員会の複数の担当者から聞いています。◎◎さんへは、参加要請を受けた作家の立場以外に有識者の立場での質問を行うのですか。
————————–
(要望1)
調査の際、私以外に弊社から1名と弁護士1名も同席したいのですが。
(要望2)
調査の打ち合せの際、ビデオ録画を行いたいのですが。
(要望3)
調査報告書の内容に関して、私の発言箇所は記名で記載することを前提とさせていただきたい。
(要望4)
調査報告に関して、私の関係箇所に関しては、事前に原稿を確認し、校正した内容を、確実に反映するという約束を取り付けていただきたい。過去、行われた組織委員会の記者会見のなかで、私が言っていない内容を、あたかも本人の発言のように発表されましたという事実があるために、確約をお願いしたいと考えます。
————————–
上記の質問への回答と、要望への確約をお願いいたします。尚、これが、最後の質問となります。
ご検討くださいますように、お願いいたします。
—————————————————

—————————————————
■ 11月24日 正午
エンブレム応募受付開始
—————————————————

—————————————————
(Mail-26)
■ 11月24日7:38メール受信
組織委員会□□様→平野

メール受信の連絡とともに、しばらくお時間をいただきたいとの返信がきました。
—————————————————

—————————————————
(Mail-27)
■ 11月24日9:21メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

みなさまがどれほどお忙しいかわかっておりますし、是非とも調査に協力したいと考えてきましたので、ひとつ返事でお受けしたいのですが、なぜ質問を重ねるのかは、私のブログを読んで下されば、ご理解いただけると思います。何卒、よろしくお願いします。

平野敬子
—————————————————

—————————————————
(Mail-28)
■ 11月27日14:20メール受信
組織委員会□□様→平野

(Mail-25)に記した、質問に対する回答がきました。
(質問1)に関して、11月16日に組織委員会が送った質問事項が今回の調査内容であり、「これらの物的証拠として作品の検分は必要ない」と調査委員が考えているとのこと。
(質問5)に関して、審査当日の録画ビデオについても、平野が質問に答えるために「特に必要ない」と調査委員が判断しており、見せられないとのこと。
(質問2)(質問3)(質問4)(質問6)の4項目に関して、回答はいただけませんでした。理由は、今回の調査は任意で進めており、誰にどのような立場で話を聞いたかという個別の内容は教えられないとのこと。
—————————————————

—————————————————
(Mail-29)
■ 11月27日20:43メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

ご回答を拝読し、組織委員会のご意向を確認いたしました。一考させていただき、回答いたします。すこしだけお時間をいただきますように、よろしくお願いします。

平野敬子
—————————————————

—————————————————
(Mail-30)
■ 2015年11月30日17:52メール送信
平野→組織委員会□□様

□□様

ご多忙な中、私の質問に対して、調査員のみなさまとご検討いただきましたこと、有り難く存じます。

今回の回答及び今までのご回答を含め、総合的に精査し、調査の受諾について検討いたしました。今までの質問に対する回答の内容及び、そこから受け取れる今回の調査の方向性、現時点で、私だけが記名で発言をしているという状況を総合的に判断いたしまして、今回の調査への協力は辞退させていただきます。

とても大切なことですので、辞退の理由につきましては以下に記します。

●辞退の理由
————————–
(1) 調査が任意という前提であり、なおかつ、匿名で受けなければならないこと。
(2) 上位14作品の画像情報を見せていただけないこと。
(3) 審査時のビデオを見せていただけないこと。
(4) 発言内容を記名で記録していただけないこと。
(5) 調査報告書の中で私に特別に関係する箇所についてはお伝えいただけるそうですが、調査報告書は基本的に確認できず、 一部を発表前に確認できたとして、仮に、私の話した内容と異なる内容が記載された場合でも、修正を行わないことがあることが前提であること。
(6) 調査担当者は 「外部有識者」であると公言なさっていますが、「エンブレム選考委員」も入っており、「エンブレム選考委員」は「外部有識者」の定義の範囲外であると考えること。
————————–

●辞退の理由の補足説明
————————–
(2) の補足説明
作品画像の確認の必要があると考えておりましたのは、情報の公平性に疑いを持たざるを得ない作品が、私の記憶では○点ありました。(上位14作品の中では○作品、それ以外も含めると○作品。)公平性について、デザイナーの観点から内容を分析し、確認したいと考えていましたので、審査委員でありながら信じていただけず、とても残念に思います。

1位案について、チヒョルトの造形及び『ヤン・チヒョルト展』の告知物との類似性について確認すべきであると考えていました。本件については、ネット上に類似指摘の情報が出た直後、8月30日に、『ヤン・チヒョルト展』の展覧会のデザインを担当したグラフィックデザイナーの白井敬尚氏に連絡を入れ、事実関係を確認し、白井氏の「原案の内容を確認したい」との意向を伝えるメールを、9月1日に、組織委員会の担当者宛に送りましたが、「見せられない」との回答がきました。ドビ氏との裁判のこともあると思いましたが、『ヤン・チヒョルト展』の告知物の制作者が、類似性の疑いのある作品を確認できないということはどういうことなのか、倫理的観点からも理解できないでおります。白井さんは美術大学で教鞭をとりながら、タイポグラフィやエディトリアルデザインを学術的に研究している人格者でして、ご自身が手掛けたデザイン作品に関わることで、疑惑が生じたことに対して、自分の目で内容を確認したいと希望なさっただけです。白井さんのみならず、審査ですでに内容を全て見ている私でさえも再確認できないということが、回答いただきました調査有識者のみなさまのご見解を、幾度読んでも理解できません。デザインの専門家の視点や見解が必要ないと思われていることがわかりません。

(5) の補足説明
 修正希望の内容が反映いただけないということは、確認できないに等しいことだと考えます。
————————–

ご覧いただいていないかもしれませんが、10月10日の私のブログ001の文末に、『「調査に協力させていただきたい」との意思があることをお伝えいたします。』と記述しておりますとうり、かねてより調査に協力させていただきたいということを強く希望しておりました。しかし残念なことに、上記に述べました理由により、辞退させていただくことを判断いたしました。調査には協力したいにもかかわらず、今回の調査には協力できませんが、みなさまの調査結果が、国民のみなさまの疑念を晴らす一如となりますことを、心よりお祈り申し上げます。

平野敬子
—————————————————

平野敬子

平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める