042 JAGDAの回答 JAGDAへの要望書

2016年9月30日に提出した意見書に対するJAGDAの回答が、提出日より40日後の11月9日に送られてきました。

その回答は、要領を得ない、的外れの詭弁文でしたので、再度新たな要望書を、本日JAGDAへ提出しました。

以下に、提出した書面の全文を記載いたします。

[JAGDAへの要望書]
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公益社団法人
日本グラフィックデザイナー協会 殿

「要望書」

文書『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 エンブレム第1回設計競技について』は、総会での承認をとりつけておらず、「全理事と全運営委員が記名に同意した文章」であり、「JAGDAの見解文書」ではありません。

公益社団法人として本文書を公開するにあたっては、本文における主語が「JAGDAは」である以上、総会での承認の手続きが不可欠であると認識しています。

しかし、本文書は総会で承認されていない文書でありながら、全頁にわたり、主語が「JAGDAは」と記載され、「JAGDAの見解」と明記し、明言しています。

その上、会員の承認を得ていない非公認文書を、JAGDAホームページ上において、「エンブレム第1回設計競技に関するJAGDAの見解」というタイトルを付け、事実はJAGDAの見解ではない嘘の文書を、ホームページ上に公開し続けています。

http://www.jagda.or.jp/information/jagda/2786

嘘の文書である本文書は、本来公開されるべき資格がなく、即刻、即日、ホームページ上からの取り下げを要望いたします。

取り下げることなく、明らかなる嘘をこのまま放置するならば、平然と、真っ赤な嘘をつき続けることが平気な、非常識で非社会的な団体であると認知されます。

現状の文書を公開し続けたいのであれば、文書に記載されているすべての主語を「JAGDAの理事と運営委員は」と書き直し、尚且つ文末に、理事と運営委員の誰がそれに同意しているのか個人名を記載し、責任の所在を明確化すべきです。そもそも記名がない文書は信頼に値しない、信頼性がない文書であると認識することが妥当であるからです。

ホームページ上のタイトルや説明書きも、嘘の記述であり、事実に即し、書き変えるべきです。

以上、要望に対する速やかな回答をお待ちしております。

平野敬子
2016年11月17日

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以上が、本日JAGDAに提出した要望書の全文です。


11月9日に受け取ったJAGDAの回答文に添えられた事務局長の手紙には、「平野さんの質問は、議事運営上の質問でしたので、個別に対応させていただきます。」と書いてありました。しかし、私の提出した意見書は、文書の嘘や虚偽性に対する異議申し立てであり、「議事運営上の質問」に留まる範囲の指摘ではありません。

さらに手紙には、「大迫個人ではなく、JAGDA事務局長としての公式な回答であります。」という当然の前提がわざわざ記されていましたが、「公式な回答であります」と明記してもしなくても、公的なやりとりであるという認識がぶれることはありせん。本件は複数のJAGDA会員が関与し、社会的問題となった五輪エンブレム問題と連なる社会的問題だからです。

ですので、一連のやりとりは密室化せずに情報公開いたします。情報の可視化によって、JAGDA会員のみならず、第三者の客観的視点という社会の眼にさらすことで少しでも自浄作用が働くことが、会の健全化につながるということを確信しているからです。

以下に、JAGDAの回答文を全文記載いたします。

[JAGDAの回答](*JAGDA回答は青字箇所)
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(平野)意見書(1)
「見解」の位置づけに関し、8月12日の内部のメールでは総会での承認はないとされているが、7月28日のHP上の説明では、依然として「JAGDAの見解を・・発表」としたままであり、対外的には組織の見解だと位置づけたままである。承認がなく、組織見解でないことを認めるなら、HPの表記も速やかに訂正すべきである。

(JAGDA)回答
本見解は、会長、副会長の三役が草案を作成し、理事、運営委員の持ち回りによる承認を得て発表したものなので、会としての「組織見解」です。


(平野)意見書(1)
「見解」の位置づけが、すでに組織見解であるのか、理事及び運営委員の単なる報告なのか、それによって意見する方も意見の仕方が変わってくる。意見集約の前提として、先ずは、速やかに「見解」の位置づけを統一的に明らかにし、組織の内外に示すべきである。

(JAGDA)回答
前述のとおり、本見解は、「単なる報告」ではなく「組織見解」です。


(平野)意見書(2)
統一的な位置づけが確立されないうちは、位置づけがあいまいなまま、対外的に「見解」を公表するのは、速やかに中止すべきである。

(JAGDA)回答
「位置づけ」があいまいであるとは考えておりません。


(平野)意見書(3)
集約された意見は、今後どのように活用するのか。それを明らかにしなければ、意見を出す方も意見を述べにくい。単に参考として、お聞きしますというだけなのか。それなら期限を切る必要もない。期限を切って集約するのなら、何らかの形でまとめて提示されるのか。人から意見集めるなら、その目的と、それが今後どのように活用されるのか、そこを明確にすべきである。最低の礼儀というか、それがないと本気で意見を集めたいと思っているとは考えられない。「共有」という曖昧な表現では何をするのか何も分からない。

(JAGDA)回答
本見解の末尾に記載されているとおり、JAGDA は、今回の問題を、長い時間をかけて、歴史的な視野に立って咀嚼、検証していこうと考えており、集約された各位のご意見は、この視野にそって活用されるべきものです。「共有」とはそのような活用を意味しています。


(平野)意見書(4)
総会での承認事項になり得ないのに、総会であたかも承認の対象にしようとした、その原因の検証がなされるべきである。

(JAGDA)回答
本見解の草案について全理事、運営委員の承認を確認できたのは、総会の前々日の夜のことであり、もともと総会決議にするつもりはありませんでした。しかし、問題の重要性に鑑みて、2015年事業報告の一部として、「組織見解」を報告することにしたものです。
本来この見解文の発表時に以下のような文言を入れることをお願いしておりました。「昨年度の事業報告の時間ですが、内容に関してはお手元の議案書を御覧ください。ここでは、この時間を利用して、エンブレム問題に関しての理事会、運営委員会で合意しました見解文を発表させていただきます」この文言が、事務局の進行の手違いにより省かれてしまい、出席者のみなさんにお伝えできませんでした。


(平野)意見書(4)
実は、手続き無視で承認しようと意図していたのか、それならそれを意図したのは誰なのか。手違いで承認のような形になったのか。しかし、総会当日、承認されないと明日から組織活動できないという、あり得ないことを言ってまで、質疑を打ち切り、承認させようとした点からすると、手違いとは思えない。意図的なものを感じる。検証して、責任を明確にすべきである。

(JAGDA)回答
本見解に関しての質疑応答は、もともと予定されていないものでしたので、これに関する質疑が長引くと、議案書に掲載された昨年の事業報告その他の重要案件についての決議ができなくなる恐れがありました。事務局長の「承認されないと明日から組織活動できない」との発言は、本見解に関するものではなく、他の重要案件に関するものです。


(平野)意見書(5)
誤った方向へ誘導した総会の議事運営方法は、あり得ない理由で質疑を打ち切られた質問者をはじめ、当日総会に出席していた全会員に対し、極めて非礼であり、謝罪をすべきであると思われる。会員にとって、総会で質問したり、議論したりするのは、当然の権利である。それが奪われたのである。会員の権利に関することであり、責任の所在を明らかにすべきではないか。

(JAGDA)回答
以上のとおり、総会の議事運営についての「誤った方向へ誘導した」、「あり得ない理由で質疑を打ち切られた」、「(会員の)当然の権利…が奪われた」との批判が、事実に反し、当を得たものでないことは明らかであると思われます。


2016年11月9日

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以上が、JAGDAの回答の全文です。

事務局長の手紙には、「エンブレム見解文への質問や問題提起への回答は、先日の運営委員会、理事会でも議論に長い時間を費やしましたが、まだ、統一的回答を用意するに至っておらず、もう少し時間をいただくことになりました。」と書いてありましたが、件の文書の主たる制作者であるJAGDA副会長の原研哉氏が、10月31日の理事会を欠席したということを、会議の出席者から聞きました。

10月25日に開催された運営委員会では、運営委員によって「会員に公開する形でシンポジウムなどの開かれた議論の場をつくるべき」という建設的な意見が交わされたにもかかわらず、原氏が中心となり、公開討論開催に反対。結果、公開討論が議決せず、議題が理事会に持ち込まれたということを、会議の出席者から聞きました。このように、原氏によって公開討論に関する議題が理事会に持ち越されたにもかかわらず、当人は理事会を欠席。6月25日の総会での強行承認採決未遂の一件も含め、問題の中心に位置づく副会長の理事会欠席を、意見書を提出し、JAGDAからの回答を待っている会員たちはどのように思うのでしょうか。

日本グラフィックデザイナー協会として五輪エンブレム問題に関する見解をまとめたいのであれば、志と奉仕の精神と覚悟を持つ、良識ある会員と外部の見識者が集い、しかるべき正当的な手順をふんで制作すべきだと考えます。そしてその文書は、「見解」という第三者的な立ち位置にすり替えられた無責任なアプローチではなく、当事者としての事実の記録、何が問題であったのか原因の解析、そして今後このような問題が起きないように反省という観点をふまえたものでなければ、文書制作に意味はないと思います。

残念なことに、五輪エンブレム問題の責任ある立場の当事者たちのほとんどが発言しない、発言しないどころか嘘をつき続けるという現状では、五輪エンブレム問題の当事者から聞き取り調査を行える可能性は低いと思いますが、それでも、審査委員、招待作家、出品者といった当事者の中に協力を申し出る人がいることを信じたいと思います。

日本グラフィックデザイナー協会に所属する者が当事者である五輪エンブレム問題に対して、反省という観点が持てなければ、専門家として、現在と未来への責任を果たすことができません。

現在公開中の、全理事と全運営委員が記名に同意した(と言っている)文書『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 エンブレム第1回設計競技について』を、JAGDAの見解として承認するということは、五輪エンブレム問題の根本原因を成し、問題に関与したJAGDAに属するグラフィックデザイナーたちやアートディレクターたちの不正を認める、不正に加担する、JAGDA会員全員が不正の共謀者になるということなのです。

五輪エンブレム問題の当事者たち自らによる「五輪エンブレム問題を総括」という、盗人猛々しい開き直りを許容するのか否か。五輪エンブレム問題の当事者たち自らが執筆した見解文書を認めるのか否か。

今以降のデザイナー人生を、天に恥じることなく、すがすがしく晴れやかに生きていきたいのか。それとも気持ち悪さを飲み込んだまま、後ろめたく生きていきたいのか。自分の意志によってどちらでも選択できるのです。

平野敬子


[修正の報告]
本文(下から六段落目)の一部修正とともに、最終二段落を追加し、11月22日に更新しましたことを報告いたします。

平野敬子
2016年11月22日

平野敬子 デザイナー/ビジョナー コミュニケーションデザイン研究所 所長
白紙撤回となった2020東京五輪エンブレムの審査委員を務める

お知らせ:11月1日発売の『建築ジャーナル』(11月号)の特集「五輪を嗤う」に寄稿しました。
http://www.kj-web.or.jp/